平成最後の夏に見る、機動戦士ガンダム00の味。
こんにちは。よるとりです。
ところで皆さん、ガンダムは好きですか。私はぶっちゃけそうじゃなかったです。そう、今までは。
私が初めて見たガンダムは小学校くらいの時に見た地上波のガンダムSEEDだったのですが、さすがにチビのガキンチョには話なぞわかる訳もなく、内容は殆ど覚えて無いです。ただ鮮烈に覚えてるのはニコルが死んだ時姉が一晩中大泣きして心配して声をかけたら手当たり次第本を投げられてとばっちり食らったことです。
Twitterではチラホラ話題に出すことはあるんですが、私は生まれてこの方全くBLにピンと来ずむしろ小~中学生時代はむしろ見たら吐き気とか嫌悪を抱くくらい忌避をしていたのと、男キャラ単体に興味を抱くことがほぼ無くてロボットアニメは必然的にご縁がありませんでした。
そんな私が一番最初に、自発的に全話見たロボットアニメが中学一年生の頃に見た「コードギアス反逆のルルーシュ」であります。カレンのおっぱいに釣られました。はい。
前置きが長くなりました。
「機動戦士ガンダム00」は2007年10月に放送されたサンライズのアニメです。当時私は中学二年生でした。まだ駆け出しのオタクでしたが、監督の水島精二氏の名前は「シャーマンキング」や「鋼の錬金術師」で存じておりました。そう、腐女子受け描写が強い監督であることを。姉がハガレンでBL萌えしてるのを見て、痛いほど。
そしてキャラクターデザインは高河ゆん。これも詳しくはないですが、LOVELESSというBL…に近い?(BLでは無いよな?)漫画を描いててたいへん女性人気が高い方であること。
これらの情報を統合した私は「このガンダムは腐女子向けであり、つまるところ、私向けではない」ということ。地方でも珍しく見れる時間にやってくれていた機動戦士ガンダム00。同年代のオタクは男子女子はだいたい見ていた機動戦士ガンダム00。私は見ずにこうして10年が過ぎ去りました。
後々、というかごく最近に鉄血のオルフェンズとガンダムWを見て、鉄血はガンダムWの流れを汲んであり、ガンダム00も同じように流れを汲んでいるという先輩や知人の発言を受けたり、00が意外と周囲の知人男性に人気なこともあり「そうか、なら見てみるか」と思い立ち、Netflixに入ってるのを見てこれは好機と言わんばかりに見始めました。
そしてちょうど一昨日1期、2期、劇場版の全てを見終えました。
まず謝罪させてください。
ガンダム00さん。
めちゃくちゃ面白かったです。
はい。本当にあの時バカにして申し訳ないと思ってます。そしてこの10年、00を見なかった自分の人生に恥じています。
おそらくイスラム過激派をモチーフにした少年兵、そしてその過激派の自爆テロの被害者。戦争のための人体実験の被害者。ガンダム的にはニュータイプの流れなんだろうけど、おそらくコンピューターやAIの延長であるイノベイター(イノベイト)。紛争地域の無力な皇女。そんな戦争の産物とは隣接しない、一般人のカップル。
ガンダム00は、とにかくキャラが多い。しかしそれでいて無駄がなく、作劇も非常にスマートなので見ていて混乱がない。
群像劇として話の構成、めちゃくちゃ完成度高いと思います。でも多分、話が難しいから中学生の時に見てもわからなかったしトランザム連呼してただけだとも思います。
限りなく実践的にどうしたら戦争はなくなるのか?というのを描ききった作品だと思います。多少ファンシーな要素が2期最終回や劇場版であって賛否ありますが演出として2期最終回の歌はかなり象徴的に使っているのであの歌好きですよ!劇場版のメタル刹那も!!
魅力的なキャラクターはたくさんいますがやはり主人公の刹那・F・セイエイについて。過酷な戦争の中で、信仰に救いを見出す少年兵。その神への絶対的な信仰すら覆す戦争の悲惨さ。少年がその最中に見出す絶対的な暴力の象徴としてのガンダムへの憧憬、執着、同化…。私の大好きな奈須きのこ氏の言葉をお借りするならば、
「少年兵が信仰の絶望の果てにガンダムに神を見るなんて、救いのない壊れ方だと思わない? 紛争によって人間性を剥奪されたものが、兵器に信じようとした神を見る……未成熟で、無知で、狭い世界しか知らなかったが故に、少年はそのあまりにも歪な救いに手を伸ばし、破綻する。」*1
マクロの話が戦争ならば、ミクロの話はこの刹那という人間の成長にあります。一度破綻し、現実を知り、人との対話を通じて和解する。話の混ぜ方がうまいです本当。
物語で彼の最初の倫理観をブッ壊す決定打となった存在、マリナ・イスマイール。貧乏皇女とか国なし皇女、オーラが無いだとか放送当時散々な言われようだったのは今覚えてます。いや言いたいことはよくわかる。
逆に言えば彼女は女傑でもなんでもなく、平和な時代なら少し家柄の良いだけの普通の女性。けれど、刹那から見ると自分の故郷を滅ぼした国の皇女であり、憎しみの対象。その彼女が真っ向から非暴力、対話の重要性を説いて癇に障った刹那が自分の正体を明かすシーン。パッと見るとガンダムW、1話における「お前を殺す」ばりのトンチキシーン なのですが、親を手にかけた刹那にとって真っ向から自分に踏み込んで自分の行いを否定してくる唯一の人間がマリナなんですよね…と思うと、本当に彼と彼女の関係は出番が少なくとも懇切丁寧に描かれていて愛おしい……。
2期でのマリナと子どもたちの姿を見て自分は決してそちら側にはいけないと線を引く刹那、「あなたが泣けないから代わりに泣いているの」と涙するマリナ、もう戦って欲しくない、自分と一緒にアザディスタンに来ないかと言うマリナ。思い出すだけで泣けてきます。私は今泣きながら書いてます。
OP映像での二人の描かれ方の変遷も素晴らしい。OP1では声を荒げるような表情で一方的に手を伸ばし花に変わるマリナ、OP3ではお互い両手を伸ばすのにそれは届かず、刹那の手は剣を握るガンダムに変わる。OP4では二人の手は限りなく近づくけれど、触れてはいない。
そうして劇場版の最後、ようやく触れ合うことのできた刹那とマリナの「君が正しかった」「貴方も間違ってなかった」
もうね。愛ですよ、愛。
ありがとうガンダム00。ありがとう水島監督…ありがとう…ありがとう…。
他にもロックオンを通して知った人間の善性を証明するために人の味方につくティエリアとか、お互いを初めてこの世に存在足らしめたものとして求め合うアレルヤとマリーとかとか、性別や関係を問わず色々な愛の形が描かれてるのがとても好きです。前述したように腐女子に優しいアニメだと思ってましたけど割とノマカプ好きに優しいアニメでした。見てみないとマジでわかりませんね、こういうのね。
また落ち着いたら通して見て造詣を深めたいですね。舞台もできればライビュなりでみたいなあ。今まで見たガンダムめっちゃ数は少ないんですが、暫定トップです。ありがとうガンダム00。(二度目)