セイレムのサンソンの描き方を通して英霊の第二の生を考える


亜種特異点Ⅳ 禁忌降臨庭園 セイレム TVCM

セイレム。サイコーでした。話についてアレやコレや言いたいことはあるんですが、まだ読み返しきれてなくて今語るとガバつくのでこれは置いておく。

※セイレム及びFGO一通りのネタバレに注意です。

 

今回セイレムでサンソンは一度英霊として死に、そして再び召喚されたけどその記憶はありません。これについて賛否あるのはわかります。ですが個人的に物凄く好きです。なんとか頑張って言語化します。
大変申し訳ありませんが私はサンソンマジオでは無いのでもし不備があったらごめんなさい。ユルシテ!

 


まずfgoのサーヴァントというのは他作品のサーヴァントと違って人理焼却を阻止するという目的の為に呼ばれて、帰属をカルデアに同じくしてどんな宗教、人種、過去、自分が殺し殺された人間に会おうとも、私情を出すことは二の次になります。ここは聖杯にかける願いは叶えられる場ではなく、それ含め大義のために個を剥奪されます。それ自体はいいんです。

 

けれど彼らも同じ大義を与えられた超越存在になった分、気心軽くなった者もいるわけで、円卓の騎士は殺し殺された仲だけれど死後は囚われず軽口を叩ける程度に仲は良い、というのが10月配信された円卓キャラ達の幕間です。

 

 

しかし逆に超越存在になったからこそ囚われてしまった者もいます。しかも一人ではありません。

 

そう。1.5部の不夜城のキャスターことシェヘラザードです。

 

彼女は英霊という超越存在は、人に便利に使われては死ぬだけの存在で何度も死の恐怖に怯えるのは嫌だ、と英霊召喚というシステム自体を成立させなくする為に魔神柱と手を組みました。

そんな彼女があんなバカバカしい説得に絆されたのはなぜか。


それは身勝手ながらもフェルグスの言う生き方に、もう1つの生というものに憧れを抱いてしまい、ほんの一握りでも傾いてしまったからには今あるサーヴァントの自分に死ぬ以外の目的が生まれる「可能性」を肯定する事になるからです。
(こう…うまく表現できなくてごめんなさい…)

サーヴァントとしてそう思ってしまうという事は生前あり得た可能性の1つなわけで。

 

サーヴァントとして生きて違う生を歩みかけがえのない何かを得る=それは生前あり得た可能性のひとつ=死後の英霊は成長もせず連続性は無いが、その事実は存在し逆説的に座の側がそのように修正される?

 

という事の肯定になる…と私は考えてます。
これがまず前提の話です。ガバいのは承知だけど許して。


そうして本題、セイレムのサンソン。
サンソンは元々、死刑執行人という決められた仕事に従事する為に個を剥奪されていました。彼は生前においても生きながら大義の目的に動くだけの道具でした。こう書くとおよそFGOにおけるサーヴァントの役割と変わらないですね。
そうしてFGOでサーヴァントとして召喚され、自分が殺したマリーがカルデアにいるもののずっとその罪や罰については触れられて来ませんでした。じゃあ円卓のようにわだかまり無く接する事が出来たのかと言ったらマテリアルみる限りそうではない。


そしてサンソンはセイレムで自分のように囚われた少女、ラヴィニアと出会い、処刑されゆく人々を前にして、これを千載一遇の好機としてマスターの判断に異を唱えて行動しました。
ここ。ここでサンソンは今までのただの目的の為の道具としての自分を否定しここでようやく個を獲得しました。
この行動周辺に関してはサンソン好きの皆さんが色々考察されてるので割愛します。

 

 

サンソンはどうしようもなく「罪による死という罰」を求めていたんだと思います。自分で自分をそう定義していた。セイレムという環境が彼にとっての聖杯のような物で、言い方が悪いけれどそれをマスターより優先させたのかもしれません。少なくとももう人理焼却という大義は失われていて今の目的はその後処理で、どの程度サンソンが大義を感じていたかはわかりません。

大前提としてサンソンの価値観に「死ぬ事でしか救われない者・罪はある(それが自分だ)」というのはあるんじゃないかなと思ってます。だからその価値観に寄り添わないとサンソンが酷い男に見えるんじゃないかな…多分…。


そうしてサンソンは望みどおり罰による死を迎えました。
それは無駄死になのか?と言えば前述したように否であるといえます。
サーヴァントとして得られたかけがえのない体験は事実である限り肯定され、逆説的に座に影響を及ぼす。
だからエピローグで、処刑人(の行い)という自らが定義する罪から解放され一人のフランス人男性としてどこか吹っ切れたサンソンがマリーをダンスに誘えたし、最後のセイレムの事を覚えていないけど前とは違うサンソンがカルデアにいた、と自分は思ってます。

 

 

FGOでは基本他世界の記憶保持してるサーヴァントが多いから既出サーヴァントについては割愛しましたがアルトリアについても似たような事いえますよね。

本来はセイバールートで英霊とならないけれど、それはかけがえない体験として座に累積した上で他時空で英霊となる事を選んだ彼女にもそれが含まれている。

静謐の…については私蒼銀読みかけなので断定的な事は言えませんが、そもそもとして願いを得た静謐は、生前の可能性では無く逸脱してしまうので座には保存されていてもその部分はFGO静謐にアウトプットされてないのかなみたいな。自信無いのでここちげーよって言われたらすいません勉強不足なので許して。

 


自分でも書いてて「いやここは苦しいでしょ…」と思わんでもないガバついた話なのでここまででお願いします。


要するに大義の為に呼ばれたサーヴァント達にとっても、FGOという世界は意味あるものであるといいしそれは決して無駄じゃない!という事を言いたかったんです
英霊の座はそんな機能ないぞバーカバーカってヤジはハイすいません!私の目にはFGOはこのように都合よく見えてるだけなので捨て置いてください!以上!終わり!閉廷!解散!

君はタイナカサチというアーティストを知っているか?―――Fateメディアミックスの立役者の再来という喜びによせて

11月某日Twitterにて

某さん「ジェネオンのミュージックフェス、タイナカサチ来たら行かないとなぁ」

自分「(へージェネオンそんなのやるのか。やなぎなぎとか来るのかな)いやーそんなの来たら絶対行かなきゃじゃないですか!まあ無いと思いますけどね笑」

 

 

11月8日、一部Fateファンに歓喜が巻き起こる。

それはタイナカサチさん(以下敬称略)こと現タイナカ彩智という一人の歌姫が表舞台に帰って来るという吉報。

おそらくFGOをメインに楽しんでいる層にはタイナカサチって誰だ?」という感覚だと思うので、そんな方々への紹介にとこの記事を書きなぐります。

要点をここで言うと「ものすごく貴重な機会なので絶対に今からチケットを取れ」という話ですが、よろしければその理由が気になる人は最後まで読んで頂けると幸いです。

 

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Fateオタクの読書感想文【3】「完訳アーサー王物語(上)」

 

完訳アーサー王物語 上下セット

完訳アーサー王物語 上下セット

 
アーサー王物語―完訳 (上)

アーサー王物語―完訳 (上)

  • 作者: サー・トマス・マロリー,中島邦男,小川 睦子,遠藤 幸子
  • 出版社/メーカー: 青山社
  • 発売日: 1995
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

タイトル:完訳アーサー王物語(上)

著者:サー・トマス・マロリー (著), 中島 邦男 (翻訳)

関連するFateキャラ:マーリン、アーサー王、ルキウス、他円卓の騎士

 

 

読みやすさ★★★☆☆

面白さ★★★★★

おすすめ度★☆☆☆☆

 

セイバーちゃんを追いかけてXX年。ついに意を決して原書に手を出してみました。今回は上下巻の上のみ。

大変古い本でおそらく入手するのは至難っぽい。発行年は1995年。

訳者のコメントとかなかったんで調べた限りですが、こちらの本はウィンチェスター写本版で原典を書き写したものだそうです。筑摩書房から出てるのはキャクストン版。

おおよそのアーサー王伝説の訳書はダイジェストで結構端折られているようで、もう一冊参考にと借りた福音館書店の「アーサー王と円卓の騎士」はおよそ430ページ

こちらは上下巻合わせると1200ページ。ざっと計算して三倍ページ数違います。昼間のガウェインかな?(すっとぼけ)

3分の1を少ないと見るか、3倍を多いと見るかはともかく、とにかく端折られて無いのを見たい!!と思う方にはこちらをオススメしたいです。

 

古い本ですがそこまで訳文に読みづらさは感じ無いですが、兎にも角にもページ数が多くて読むの大変でした。割りと斜め読みだったのは否めない。

あと多分これダイジェスト版だとハブられてるんでしょうけど、とにかく出てくる騎士の数が多い!!名前が似ている!!誰が誰だかわからん!!

ベディヴィエールとペディヴィアのように似てる名前の騎士がワンサカ出てきます。エクターも二人出て来るし。大真面目に読むと頭シッチャカメッチャカになるのでは無いだろうか…。

 

上巻はアーサー王生誕、ブリテン統一とローマとの戦いと、ガレスの冒険、湖の騎士ランスロットの冒険、トリスタンの冒険など。(目次を見損ねたので今度確認します)

マーリン、ものすごく前半だと喋るのにウィンチェスター版の定めなんでしょうか。120ページでなんと石の下に生き埋めに…。本人ケロっとしてるのが言い様の無いほどシュール。

 

ちらほら聞いてたんですが、ランスロット骨頂で描かれていて、ガウェインがものすごく扱い悪いです。想像以上だった。

(例、他の騎士からやたらめったら褒められるランスロット、多分作中最大表現でアーサー王から褒められるランスロット、それに対して騎士らしからぬ行いをして諌められる事が何度かあるガウェインなど)

それでもやはり、Fateに名前が出ているキャラの掛け合いが出るとちょっと嬉しいもので、特にトリスタンの章(この本ではトリストラム)はトリスタンの奇行っぷりが凄まじくて完全に芸人だと思いました。

 

ただとにかくページ数が多い事と、絶版になっていて中古価格がとんでもない事になっているのがたいへんなネック。定価が上下巻セットで約1万円なんですが、アマゾンだとセットで1万7千円のプレ値に。それでも0.5GoAなんですけどね(謎の通貨単位)

読み切るエネルギーがあるのであれば、大学図書館のような研究職の強いところで探してみるとあると思います。あと国会図書館とか。

 

余談ですがこの本他に読んだ方の感想がどれだけ探してもアマレビュの一件しかなくて衝撃受けました。

下巻はまた今度挑戦してみます。

Fateオタクの読書感想文【2】「大魔法師マーリンと王の誕生 (アーサー王の世界 1)」

 

大魔法師マーリンと王の誕生 (アーサー王の世界 1)

大魔法師マーリンと王の誕生 (アーサー王の世界 1)

 

 タイトル:大魔法師マーリンと王の誕生 (アーサー王の世界 1)

関連するFateキャラ:マーリン、アーサー王

 

読みやすさ★★★★★

面白さ★★★★☆

おすすめ度★★★★★

 

図書館でアーサー王関連の本を探していたら児童書のコーナーに置いてあり、新しめなので検索してみるとアマレビュが一件もついてないもののどうやらマーリンが主人公らしい。

著者の斉藤洋さんは昨年映画化した「ルドルフとイッパイアッテナ」の原作者らしいです。

 

はっきり言って私普段読まないのでちょっとむずかしめの本は読むの途中で飽きてしまうんですが(特にアーサー王関連は難しいし訳文がくどい文章の本が多くないですかね)

児童書の作家さんらしく1ページの文字の量が少なくて字が大きい、ページ数は160程度なので本当に1日で読み切れます。

 

マーリンが主人公のアーサー王伝説再話で1巻はマーリン誕生~アーサー王誕生まで。

他の本のマーリンは端役キャラな事が多いですが、ガッツリ主人公なので大変出番が多くFateでマーリン好きならかなり楽しめると思います。というかほんと読みやすいし読んで欲しい。

現在二巻まで出ていて刊行ペースは年1くらいだろうか。完結までが凄い長そう。

 

こちらのマーリンは黒髪なんですがショタ時代で既にかなりキモが座ってるのと、理想の王を作り上げるために結構非人道なことをやるので、なんか物凄い既視感があります。私が知ってるマーリンじゃん!ってなる。

「売女だ……。」のシーンは割りと爆笑必須だと思うんですが一応児童書の棚に置いといて売女とか書いていいのか。

アーサー王はどんな描かれ方してるのか2巻が割りと楽しみですね。おすすめ度高いです。

 

追記はただのカプ厨の叫びです。ネタバレです。

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Fateオタクの読書感想文【1】「神話にみる女性のイニシエーション (ユング心理学選書)」

 

神話にみる女性のイニシエーション (ユング心理学選書)

神話にみる女性のイニシエーション (ユング心理学選書)

 

 タイトル:神話にみる女性のイニシエーション 

関連するFateキャラ:エレシュキガル、イシュタル

 

読みやすさ★★☆☆☆

面白さ★★★☆☆

おすすめ度★★★☆☆

 

閉架トリスタンとイゾルデの本を探してたらたまたま見かけた本。

そこそこ昔の本なのでちょっといいお値段になってしまってるのにキンドル版や再販がないので、図書館で探してみるのが多分吉。

 

ユング心理学を元に話を進めてるので解説はあるもののユング心理学の前知識はほぼ必須。うろ覚えで読んだのがもったいなかったので今度ちゃんとユング心理学の本で基礎知識覚えてから読みたい。

とはいえ日本だとマイナーめなイシュタル(イナンナ)と、エレシュキガルを同時に取り扱ってる本は珍しいし、

何よりイシュタルが父性から解き放たれた特異な女神像であるという考察は興味深いので入手難易度は高いけど読んでみる価値はあると思います。

イマイチ理解しきれなかったので今度再読します。